日本通訳学会第8回大会スケジュール
上下左右マージン15 mm、A4版横向き印刷
>> Download PDF version

 開催日:  2007年9月22日(土)〜 9月23日(日)
 会    場:  大阪大学中之島センター
第1日目
09:15 -
受付開始 (7階エレベータホール)
09:45 - 10:00 開会の辞: 鳥飼 玖美子 (日本通訳学会会長・立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科教授)
実行委員長挨拶: 津田 守 (日本通訳学会理事・大阪外国語大学大学院通訳翻訳学専修コース主任教授)
場所: A会場 (7階)
 
研究発表(次の3会場で並行して行います)
A会場 (7階)
通訳教育・実践・理論 (N=84)
B会場(7階)
翻訳教育・実践・理論、他 (N=60)
C会場 (7階)
司法・コミュニティ通訳関連 (N=48)
10:10 - 10:40 "MANY SHADOWINGS" MODEL
本條 勝彦
新聞記事の「動詞」の韓日翻訳
ストラテジー

金 漢植
紛争と通訳者
武田 珂代子
10:45 - 11:15 日英同時通訳における品詞転換
鈴木 憲之 (S)
ドイツロマン主義者の翻訳論:F・ローゼンツヴァイクに焦点を当てて
斉藤 美野 (S)
[コミュニティ通訳分科会セッション]
スラング交じりの証人尋問の場面における通訳の影響〜模擬法廷とパイロットリサーチの結果について
水野真木子・浅野輝子・中村幸子
毛利雅子・吉田理加
11:20 - 11:50 日英同時通訳における方略分類のための試論
石塚 浩之
"JAPAN COOL" の輸出法:日本のマンガの英語翻訳への新たな視点
中村 優子 (S)
12:00-12:30 会員総会 (7階A会場)
  • 活動報告
  • 会計報告
  • 次期活動計画および予算案について
  • 第9回総会・大会について

  • ※ 総会に出席できない方は必ず事前に委任状を提出してくださるようお願いします。
    12:30 - 13:40
    昼食 (食堂は2階にあります。お弁当持参の方は1日目のみB会場をご使用いただけます。)
    13:40 - 14:10 英日同時通訳における表層記憶の喪失
    関口 洋平 (S)
    「翻訳教育」とテクスト分析
    長沼 美香子
    日本の刑務所における通訳翻訳:実務者の視点からの一考察
    修 麗娜 (S)
    14:15 - 14:45 東京外国語大学における日英通訳指導について
    鶴田知佳子・光藤京子
    REGISTER の観点から考察した翻訳メモリの有効性
    山田 優 (S)
    韓国における法廷通訳翻訳についての一考察
    成川 彩 (S)
    14:50 - 15:20 異文化コミュニケーション能力の修得プロセス〜通訳演習参加者の事例より
    新崎 隆子
    MANAGING INCOMPATIBLE IDEOLOGIES IN TRANSLATION / INTERPRETING
    Ovidi Carbonell i Cortés
    台湾の中日通訳翻訳教育について〜教育機関別の現状と将来
    丁 紀祥 (S)
    15:20-15:50
    コーヒーブレイク  (7階エレベータホール)
    15:55 - 16:25 焦点連鎖と訳出の語順
    河原 清志
    単一事例デザインによる自己記録を用いた文字通訳訓練の効果の検討
    吉岡 昌子
    北京語言大学中日同時通訳修士課程における通訳実習の特徴と課題
    岩本 明美 (S)
    16:30 - 17:00 大規模音声コーパスを用いた日英・英日同時通訳における訳出遅延の比較分析
    小野(S) ・遠山(S) ・松原
    [通訳教育分科会セッション]
    通訳教育に関するアンケート調査(平成18年度実施)の中間報告
    田中、稲生、河原、新崎、中村
    [院生コロキアム]
    院生有志による自主セッション
    大阪外国語大学、神戸女学院大学、東京外国語大学、立教大学等の院生有志
    17:00 - 17:30 --
    17:45 - 20:00
    懇親会 (会場=9階)

    第2日目
    09:30 - 10:00
    <ワークショップ 受付: 7階エレベータホール>
    10:00 - 12:00 ワークショップ1:「通訳翻訳リサーチ方法論入門」
    会場:B会場(7階)
    コーディネータ=船山仲他・染谷泰正
    ワークショップ2:「中国語通訳翻訳研究入門」
    会場:C会場(7階)
    コーディネータ=永田 小絵
    12:00-13:00
    昼食 (食堂は2階にあります。お弁当持参の方は正午以降に10階の北側ロビーをご利用ください。)
    12:30 -
    受付開始
    10階
    特別プログラム
    「グローバル化する日本における法務通訳翻訳の現状と課題」

    主催:日本通訳学会
    後援:法務省
    会場:10階 佐治敬三メモリアルホール
    参加費:無料 (会員以外の方も参加できます)

    13:15 - 13:45 第1部
    開会の挨拶: 日本通訳学会会長・立教大学大学院教授  鳥飼 玖美子
    基調講演   : 講師・法務省から(調整中) 「法務省・検察庁と法務通訳翻訳」
    13:45 - 14:55 第2部:発題「現状と課題」
    1. 講師・大阪地方検察庁早川幸延検事 「捜査及び公判通訳翻訳」
    2. 講師・大阪刑務所渡邉真也国際対策室長 「刑事施設の運営と矯正処遇等における通訳翻訳」
    14:55 - 15:25 コーヒーブレイク (10階エレベータホール) (質問票回収)
    15:25 - 16:25 第2部(続)
    3. 講師・法務省入国管理局川畑豊隆法務専門官 「出入国管理及び難民認定業務における通訳翻訳」
    4. 講師・法務総合研究所国際協力部亀卦川健一教官 「法整備支援活動における通訳翻訳」(
    16:25 - 16:40 コーヒーブレイク (10階エレベータホール) (質問票回収)
    16:40 - 17:20 第2部(続)
    5. 通訳翻訳人(捜査、弁護、法廷、矯正、入管などの領域での司法通訳翻訳実務者)からの発言
    17:20 - 17:50 第3部
    6. 質疑応答とまとめのディスカッション

    ※ 研究発表=20分、質疑応答=10分(質問は発表内容に直接関連したことについてのみ手短に行うものとします。質問者の単なる意見の陳
       述はご遠慮ください。)
    ※ プロジェクターとパソコンは各教室に用意してあります(ただし、ウィンドウズ対応のみ)。パワーポイントをご使用の方は Power Point 97-2003 と
       互換性のある形式でファイルを作成・保存した上で、データを USB メモリーに入れて当日ご持参ください。拡張子が .pptx の Power Point 2007
       形式で保存したものは会場のパソコンでは再生できないことがありますのでご注意ください。
    ※ パソコンをご持参の方は各自発表前に会場で接続の確認をしていただくようお願いします。

    ※ 第1日目の懇親会会費(1人 5,000 円)は当日、受付でお支払いください。

    [大会実行委員長]
    津田守(大阪外国語大学)
    [発表会場担当理事](下線は主担当理事)
    A会場:西村・田中・染谷、B会場:船山・水野(的)・鶴田、C会場:鳥飼・近藤・永田・水野(真)


     


    発表要旨

    "Many Shadowings" Model
    本條 勝彦
    非常勤講師(同志社大学大学院・関西大学大学院・神戸市外国語大学・大阪府立大学)

    ABSTRACT
    シャドーイングは、以前より通訳訓練の一環として利用され、最近では外国語学習で盛んに活用されている。リスニング能力向上に効果があることは実証・理論両面からの研究でかなり明らかになっており、その他の語学スキル習得に有効かどうかについても、さまざまな報告・研究がなされている。一方で、シャドーイングのメカニズムについては、いまだ疑問も多く、弊害を指摘する声もある。本来の目的であった通訳訓練そのものにおいても、オウム返しする癖がつくと、意味を理解したり別の言葉で表現する能力が伸びないという理由で、同時通訳の訓練には逆効果だという声もある。聞いた音をほとんど同時あるいは少し遅れて繰り返すだけという、一見単純な シャドーイングという行為に対して、何故こうした正反対の議論が生じるのだろうか? また、シャドーイングには、音声面を意識した「プロソディックシャドーイング」と、意味を理解しながら行う「コンテンツシャドーイング」の2種類のシャドーイングがあるという理解が広まっているが、何故2種類のシャドーイングが存在するのか、2種類だけなのか、という疑問が生じる。
       本研究では、脳内部におけるシャドーイングのプロセスが実は非常に複雑で、シャドーイングの効果は条件・状況次第で大きく変わるという性格を持っていることを明らかにし、幅広い条件下でのさまざまな「シャドーイング」を十把一絡げに議論することの危険性を指摘するとともに、認知機能や脳の構造といったより根本的なアプローチからシャドーイングの内部構造解明を試み、シャドーイングの包括的なモデルを提案する。その上で、目的に応じて適切な「シャドーイング」を選択することの重要性を示す。



    日英同時通訳における品詞転換
    鈴木 憲之
    東京外国語大学大学院 博士前期課程 (S)

    ABSTRACT
    通訳といえば同時通訳と言われるほど同時通訳は広く認知されている。しかし、厳しい時間的制約の下で言語の差異を乗り越えながら行われる同時通訳、特に日本語から英語への同時通訳を実際のデータを用いて明らかにしたものは少ないのが現状である。本発表では、日英同時通訳における言語的特徴、特に日本語から英語に訳出する際行われる品詞転換に注目し、初心者に見られる訳出の傾向を明らかにする。東京外国語大学国際コミュニケーション通訳専修コースに在籍する大学院生8名が行った日本語から英語への同時通訳(生同通)をデータとして用い、品詞転換がいかに行われているかを分析する。
       一般に、日本語から英語への同時通訳は、起点言語と目標言語の語順の違いが顕著であるがゆえに困難であるとされるが、通訳者はさまざまな方略を使い同時通訳を行っていると考えられる。特に、品詞転換は同時通訳を円滑に進める上で重要かつ有益である。したがって、同時通訳中に行われる品詞転換を (1) 起点言語である日本語、または目標言語である英語の品詞が持つ特徴によるもの、(2) 文を細かい訳出単位に区切る過程で、英語の語順に当てはめるために起こるもの、の2つに分け、大学院生が行った同時通訳のデータからそれぞれ例を挙げ、大学院生の通訳に見られる現象を検証する。以上、本発表では同時通訳初心者による同時通訳のデータから品詞転換に着目し、訳出に見られる特徴ならびに起点言語である日本語の持つ品詞情報の重要性についても考察していきたい。



    日英同時通訳における方略分類のための試論
    石塚 浩之
    株式会社ノーリツ国際事業部

    ABSTRACT
    同時通訳の過程では、2言語間の即時変換を可能とするためさまざまな方略がとられる。特に日本語と英語など大きく言語構造の異なる言語間の同時通訳においては、通訳の同時性確保のため採用されるべき方略の意義は大きい。本研究は同時通訳に必要とされる実用的方略の基本的分類の試みであり、セレスコヴィッチ(意味の理論、1978/1998)、ジル(努力モデル、1985)、水野(意味表示モデル、1997)のモデルに基づき、同時通訳の実践に際して有効であると想定される5つの方略分類を提示する。さらに実際の同時通訳記録の観察より、5つの方略の具体的事例を分析し、方略の分類およびそれぞれのモデルの有効性を検証し、実践との具体的接点を持つ基盤理論構築の可能性を探る。現段階では分析対象事例の蓄積は不十分ながらも、それぞれの方略の発生頻度データを収集し、将来における定量・定性の両面からの統合的分析および実践に必要な方略の全体的見取図提示への試みを示す。本研究では日本語から英語への同時通訳事例のみを扱い、日本語、英語の音声データより文書化されたテキストの比較を通じ、客観的に観測可能な言語現象のみを対象事例として抽出し分析する。



    英日同時通訳における表層記憶の喪失
    関口 洋平
    東京外国語大学大学院 博士前期課程 (S)

    ABSTRACT
    通訳技術に関してこれまで、原文の形式・構造にとらわれずに内容(意味)を理解し、それを目標言語で表現(訳出)することの重要性が指摘されてきた(いわゆる「脱言語化」の問題)。限られた時間、限られた処理能力の中で行わなければならない同時通訳では、いかに効率性を高めるかが鍵となる。語順の異なる英語と日本語の通訳では、原文の形式を維持することはほとんど不可能であり、従って、原文の表層的記憶は早期に喪失され、意味を中心とした記憶へと転換されるのではないかと考えられる。本研究では、Isham (1994) が用いた研究手法に則り、英日同時通訳において原文の表層的記憶(形式)がどのように維持あるいは喪失されるかについて検討した。Isham が示唆した通り、語順の大きく異なる英語から日本語への同時通訳では、原文の表層的記憶はほとんど維持されずに喪失される傾向がみられた。一方、言換えや要約などの反応がみられたことから、原文の形式ではなく、意味に着目した処理が積極的に行われていることが示唆された。

    Isham, W. P. (1994) "Memory for Sentence form After Simultaneous Interpretation: Evidence both for and against Deverbalization," In: Lambert, S. M. and Barbara Moser-Mercer (1994) Bridging the Gap; Empirical Research in Simultaneous Interpretation. Amsterdam: John Benjamins.



    東京外国語大学における日英通訳指導について
    鶴田 知佳子 ・ 光藤 京子
    東京外国語大学

    ABSTRACT
    東京外国語大学では、学部の3年生から始まる国際コミュニケーション・通訳特化コース(注)において、日英通訳指導を行っている。本発表では、日英通訳指導で学生の文法に焦点を当て、本学で特に留意している点を発表する。具体的には、鶴田知佳子が学部3年生に指導している通訳演習の授業、光藤京子が指導している専修コース修士1年生の逐次通訳、鶴田知佳子が指導している専修コース修士2年生の日英同時通訳演習について述べる。特に、冠詞、可算名詞・不可算名詞、単数複数については、英語母語話者が日英通訳を聞いた場合に間違いがあると理解が妨げられるとされている。通訳者の立場から英語母語話者が聞いた場合、あるいはリレー通訳としても堪えられるような正確でわかりやすい英語になっているためには、上記のような日本人がよく間違える部分についての指導が大切である。本研究では、本学通訳特化コースおよび専修コースの学生に文法上どのような弱点があるかを分析し、今後の指導について考察する。

    注:「特化コース」とは、学部の3年生から始まり、4年生で修士1年の単位を先取りし、学部と大学院専修コース両方を5年間で修了できるプログラムである。



    異文化コミュニケーション能力の修得プロセス〜通訳演習参加者の事例より
    新崎 隆子
    通訳者・青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科博士後期課程 (S)

    ABSTRACT
    異文化コミュニケーションの形式のひとつである通訳を介したコミュニケーションにおいて、通訳者にはどのような異文化コミュニケーション能力が求められるか、また、それはどのように修得されるのかのという問題に答えるために、参与観察とジャーナル・アプローチにより通訳演習参加者の事例を検討した。
       通訳の役割はこの20 年ぐらいの間に、機械のように言語の転換をするという単純なものではなく、異文化間のコミュニケーションを助け、それに参加する行為と受けとめられるようになってきた。一般的な異文化コミュニケーション能力は、異文化に対する前向きの姿勢、知識、スキルの、相互作用をもつ3つの要素から構成されるが、通訳者にはその上に、二つの文化を関連付け比較する能力が必要とされる。しかし、現在、世界の通訳訓練・教育では異文化コミュニケーション教育がほとんど行われておらず、通訳者は仕事を通してその能力を培っているのが現状である。そこで、大学の通訳演習における参与観察とジャーナルの記述を手がかりに、演習の参加者が異文化コミュニケーション能力を修得するプロセスを観察した。
       通訳演習の参加者は、当初、通訳を単なる言語の転換作業と捉える傾向があったが、オリジナル・スピーカー、通訳者、観客の3 者の役割を演ずるロールプレイを通して、声の大きさや話すスピード、身体の姿勢、顔の表情などコミュニケーションとしての側面に注目するようになり、さらに日本語と英語を比較することで言語の背景にある文化を意識するようになった。 考察の結果、通訳者は大まかに5つのステップを経て異文化コミュニケーション能力を身につけ、その能力の源泉はコミュニケーション参加者に対する人間的な思いやりと想像力ではないかとの示唆を得た。発表では、異文化コミュニケーションの視点に立った通訳訓練の必要性についても論じる。



    焦点連鎖と訳出の語順
    河原 清志
    立教大学大学院 異文化コミュニケーション研究科博士前期課程 (S)

    ABSTRACT
    一般に、通訳・翻訳をする際、起点言語との言語構造の違いから目標言語の産出過程において訳出順の大幅な操作を強いられることが多い。そこで本発表では、聞き手・読み手の立場から、訳出結果を理解する際に働く認知メカニズムに着目し、訳者によっていかなる語順で言語情報が配列されると聞き手・読み手にとって認知的負荷がかからない形に訳文が収まるのかについて、まず主体の認知能力の中核部分を構成する参照点能力に基づいた「焦点化」と「焦点連鎖」という現象を考察した上で、それを通訳・翻訳の事例に応用する試みを行う。本発表は聞き手・読み手の立場からの考察なので、同時通訳・逐次通訳・翻訳などの訳出環境による制約は棚上げし、聞き手・読み手が訳出された言語情報とどう向き合って動的に処理するかに焦点を当てて、その認知プロセスと訳出順との関係について論じることとする。本発表は、英語から日本語への訳出を分析対象とし、日本語の(広義の)翻訳空間における欧文脈、直訳の系譜の問題に関連して浮上する論点(ゼロ化される代名詞の言語化現象、関係代名詞・関係副詞的表現、無生物主語による他動詞表現など)も射程に入れて論じることとする。



    大規模音声コーパスを用いた日英・英日同時通訳における訳出遅延の比較分析
    小野 貴博 (S) ・遠山 仁美 (S) ・松原 茂樹
    名古屋大学

    ABSTRACT
    本発表では,日英および英日同時通訳における訳出遅延現象の比較分析について述べる。人間の高度な言語処理活動である同時通訳は、訳出プロセスの複雑さに加え、大規模な実データが存在しなかったこともあり、訳出メカニズムについてはほとんど解明されてない。同時通訳では、通訳者の間で訳出方略にバラツキがあるため、訳出プロセスを把握するためには多くの通訳者の通訳事例をカバーする大規模データを用いた調査が重要である。本研究では、大規模同時通訳データベースを用いて単語レベルの訳出遅延時間を大量に計測し、日英・英日同時通訳における訳出遅延現象の違いを調査した。分析に用いた名古屋大学同時通訳データベースには、発話単位レベルの発声開始・終了時刻が人手により付与されている。分析を行うにあたり、音声認識の技術を利用することにより、単語レベルの発声開始・終了時刻を推定し、対訳語の訳出遅延時間を大量に観察することを可能にした。分析の結果、日英通訳に比べて英日通訳の訳出遅延が小さくなることがわかった。



    [コミュニティー通訳分科会セッション]
    スラング交じりの証人尋問の場面における通訳の影響〜模擬法廷とパイロットリサーチの結果について
    分科会代表: 水野 真木子(千里金蘭大学)
    チームメンバー:浅野 輝子(名古屋外国語大学)、中村 幸子(愛知淑徳大学)、毛利 雅子(南山短期大学)
    吉田 理加(立教大学大学院(S))

    ABSTRACT
    2009年度から導入される裁判員制度の準備として、各地の裁判所が模擬法廷を開催し、裁判員制度が直面するであろう問題点を探っている。しかし、要通訳外国人事件を想定した模擬法廷はいまだ行われていず、裁判関係者の間に通訳が裁判員に与える影響についての視点が欠けているのが現状である。 諸外国では、通訳が与える影響についての模擬陪審員を使った研究がこれまで多く行われてきている (Berk-Seligson, 1990 など))。それらの研究により、通訳者の訳し方によって陪審員が受ける印象にかなりの差が生じることが明らかになっている。
       コミュニティー通訳分科会は「通訳の等価性、正確性」というテーマで研究プロジェクトを進めているが、その一環として、5 名からなるチームで模擬裁判のシナリオを作成し、それを使って通訳の影響を検証することにした。今回は、外国語の証人尋問の場面に焦点を当て、通訳者にとって最も訳しにくいとされるスラング交じりのスピーチを、英語のネイティブスピーカー2名の協力により作成した。それを、パイロットリサーチとして、通訳スクールの受講生を中心に、訓練も受けていてほぼプロに近い被験者に通訳してもらい、その通訳プロダクトを分析し、およその傾向と、想定される影響について検討した。本発表では、その結果を発表するとともに、模擬裁判員と通訳者を入れての実際の模擬裁判を行い、新たな問題提起の場としたい。

    Berk-Seligson, Susan. (1990/2002). The Bilingual Courtroom: Court Interpreters in the Judicial Process, The University of Chicago Press.



    韓国における法廷通訳翻訳についての一考察
    成川 彩
    大阪外国語大学大学院 博士前期課程(通訳翻訳学専修コース)(S)

    ABSTRACT
    近年外国人事件の急増している韓国の裁判所において、新たな取り組みが行われている。法廷通訳翻訳の詳細を定めた『通訳・翻訳及び外国人事件処理例規』の制定および施行(2005年1月1日)、ソウル高等裁判所、およびソウル、仁川、水原、釜山、光州地方裁判所における外国人刑事事件専門裁判部の設置、契約職公務員としての英語通訳専門家の採用等である。外国人刑事事件専門裁判部判事ら法曹関係者へのインタビューからその実態を明らかにする。また、発表者自身が、主として大阪地方裁判所で法廷通訳人を務めていることから、日本との比較の視点で、韓国におけるワイヤレスマイク使用の有無や通訳人の着席位置等、要通訳事件の裁判運営状況についても、傍聴等を通して明らかになったことを報告する。一方、言語別通訳人人員数と言語別外国人被告人人員数の比較からは、特に通訳大学院で開講されていない言語での通訳人不足がうかがえる。実際、タガログ語の通訳人が見つからず、法廷で韓国語⇔英語⇔タガログ語のリレー通訳が行われたケース、被告人の母語を特定できないまま身振り手振りで裁判が進められたケース等が報道されている。通訳人不足の現状を分析し、韓国の法廷通訳翻訳における問題とその解決方法を探る。



    紛争と通訳者
    武田 珂代子
    Monterey Institute of International Studies

    ABSTRACT
    第二次世界大戦中、米国西海岸で12万人近い日系人・日本人移民が「適性外国人」として収容所に強制収容される中、6,000人を超える日系二世米国人が米陸軍の日本語学校(MISLS)で軍事諜報訓練を受けた。彼らは語学兵として日本人捕虜尋問時の通訳、捕捉文書の翻訳、情報傍受、暗号解読などに従事し、連合軍勝利に貢献した。また戦後は、米国の日本占領政策の中で 5,000人以上の MISLS 出身者がその日本語能力を生かして多方面で重要な役割を果たし、東京裁判においても日本人通訳者の通訳をチェックするモニターや提出証拠文書の翻訳者として働いた。本発表ではこれら日系二世米国人通訳・翻訳者の社会学的位置付けを Cronin (2002) の autonomous interpreter (当事者組織内部から訓練・調達された通訳者) と heteronomous interpreter (当事者組織外部から強制的あるいは誘導的に訓練・調達された通訳者) の概念を使って考察する。現在のイラク戦争における通訳者との類似点、および米国の言語政策についても言及する。

    Cronin, Michael (2002) "The Empire Talks Back: Orality, Heteronomy and the Cultural Turn in Interpreting Studies." In F. Pochhacker & M. Shlesinger (eds.) The Interpreting Studies Reader. London/New York: Routledge, 387-397.



    台湾の中日通訳翻訳教育について〜教育機関別の現状と将来
    丁 紀祥
    大阪外国語大学大学院 博士前期課程(通訳翻訳学専修コース) (S)

    ABSTRACT
    台湾初の翻訳研究科が輔仁大学大学院に1988年発足し、台湾における通訳翻訳学研究の新たなページが開かれた。対象となった言語組み合わせは、中国語と英語、日本語であった。近年、先駆者達が積極的に台湾の通訳翻訳教育を推進した結果、この領域はようやく専門分野として認知されてきた。各大学・科技大学・技術学院(単科大学)は異文化交流に必要な通訳コミュニケーションにおける資質の重要性を認識し、日本語学科あるいは応用日本語学科では、通訳翻訳教育を取り入れ、高い言語運用能力を備える人材の育成に力を入れはじめている。一方、民間での通訳教育機関も相次いで設立されている。これまでの言語教育の「話す・聞く・読む・書く」という4技能に「訳す」技能も追加しようと提唱する教育者の声も大きくなってきている。2001 年からは、毎年のように通訳翻訳学科・研究科が新設されてきた。台湾における通訳教育はますます重視される方向にある。すでに通訳養成訓練講座を設置している大学・社会人コースは 15 校ある。大学院レベルの教育機関としては、国立台湾師範大学翻訳研究科や輔仁大学翻訳学研究科などが挙げられる。さらに、台湾翻訳学会(1997年設立)も通訳翻訳教育に関する研究会や論文集を数多く出版するようになった。21 世紀に入り、各民族及び言語間での多言語コミュニケーションの機会が増加し、高度な言語運用能力を備えた通訳者の育成が不可欠になっている。本発表では台湾における日中通訳教育の現状報告を試み、将来への展望を示したい。



    日本の刑務所における通訳翻訳〜実務者の視点からの一考察
    修 麗娜
    大阪外国語大学大学院 博士前期課程(通訳翻訳学専修コース)(S)

    ABSTRACT
    日本の刑事収容施設は全国6種類 295庁があり、そのうち刑務所は全国に 60 箇所にある。1996 年頃から矯正施設の被収容者数が増加し、同時に外国人受刑者の数も増えてきている。そのような状況の中、2006年5月24 日に新監獄法「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」が施行された。
       本発表は、改正法施行後、通訳翻訳人の現状がどのようになっているのかについて考察を加えるものである。法律の改正によって、例えば受刑者の外部交通の範囲が拡大された。犯罪性のある者等との間の発受を除き、基本的に信書の発受を認めるということである。すなわち、改正前は信書の発信が月に1通であったものが、月に4通になり、また以前は信書のやり取りは親族としか許されていなかったが、改正後は、親族だけではなく、他の者ともすることが可能となったのである。旧監獄法の下では、面会を許す相手として親族以外は自由裁量になっていた。改正後は、親族、重大な利害に係る用務の処理のため面会が必要な者、さらには改善更生に資すると認められる者と一定の相手方との面会を許すこととなった。
       そもそも、通訳翻訳人には、受刑者の仮釈放に係る地方更生保護委員の面接、所内における取調べ事犯についての通訳をするとともに、面会における日本語の書き取りという業務があり、それらに加えて、改正法施行後には、以前より増えた受刑者の手紙および所管物を翻訳するように求められている。今回の法改正は、主に受刑者の人権尊重をいっそう推進するとの理念に立つとされる。確かに、受刑者にとっては外部交通の範囲が拡大されるなど生活水準の向上が見られるが、通訳翻訳人にとっては過重な負担になっている面もあるのではないだろうか。それに対して、どのような対応策が考えられるのだろうか。通訳翻訳業務の質の保持という観点から考察を加えたい。



    北京語言大学中日同時通訳修士課程における通訳実習の特徴と課題
    岩本 明美
    大阪外国語大学大学院 博士前期課程(通訳翻訳学専修コース)(S)

    ABSTRACT
    大阪外国語大学大学院博士前期課程通訳翻訳学専修コースと北京語言大学中日同時通訳修士課程との間に、2005年9月、学術交流協定が結ばれた。発表者は大阪外国語大学側からの第1期交換留学生として、2006 年10 月から2007年7月までの約10ヶ月間、当該課程において通訳実習等に参加することができた。北京語言大学は、外国人を対象とする中国語教育を専門に行う大学として、1962 年に設立された。現在では、中国人学生を主体とする学部も設置されており、外国語学部には早くから日本語学科が設置されていた。そして、2003年9月に在職者対象の「中日同時通訳養成コース」が開講され、翌2004年9月には中日同時通訳修士課程が同大学院に発足した。このように、当該課程は大学院での日中同時通訳者養成を目指す中国(大陸)で初めてのプログラムであり、国内外の日中通訳学習者・教育者・学術機関から広く注目を集めて いるといえる。
       本発表においては、発表者自身が受講した通訳実習の具体的内容・関連情報、2007年7月2日に実施した受講生対象のアンケート調査の結果などを紹介する。同時に、一学生の視点から、大阪外国語大学大学院通訳翻訳学専修コースとの比較を行い、通訳実習分野での北京語言大学の優位性、通訳理論分野での大阪外国語大学の優位性という特徴、そしてそれらに見られる今後の課題について、両コース学術交流の相互補完的性質を踏まえた上での提案を試みたい。日本でも大学院レベルにおける日中通訳者養成へのいくつかの取り組みが見られ、議論も今後ますます活発化するであろう。今回の実践報告の目的は、中国においていち早く設置された北京語言大学大学院当該課程の実情を日本に伝え、その実績の共有化をはかることにある。本発表が、通訳教育が抱える課題の解決、およびそれに向けた協力のあり方を模索していく上での契機となることを期待する。



    [院生コロキアム]
    院生有志による自主セッション:研究テーマの紹介および意見交換

    ABSTRACT
    本セッションでは、通訳翻訳にかかわるテーマでさまざまな研究を行っている大学院生が集まり、お互いの研究テーマを紹介しながら、各自が抱える問題点や課題、研究方法等について意見交換・情報交換をすることを目的としています。現在のところ、大阪外国語大学、東京外国語大学、神戸女学院大学、立教大学等の院生が参加する予定ですが、この他の大学院の院生や大学院進学を目指している学部生、および一般の方の参加も歓迎します。参加に当たっての事前の申し込みは不要です。



    Register の観点から考察した翻訳メモリの有効性
    山田 優
    立教大学大学院 異文化コミュニケーション研究科博士後期課程 (S)

    ABSTRACT
    ローカリゼーション翻訳は、the minimalist replacement of natural language stirrings と特徴づけられるが、それは、ローカリゼーションの最大の特徴が「翻訳メモリ」を使っているからである。翻訳メモリは、原文と訳文を対に蓄積されたデータベースから形式的な構文の差分箇所を置き換えるだけで翻訳できると意図されたツールであるがゆえこのように言われる。しかし、実際の翻訳はこのように単純ではなく、また翻訳メモリのツールに表示される「マッチ率」が、実際の翻訳負荷と相関しているという学術的根拠もない。本研究では、翻訳メモリの有効性を "register" の観点から考察する。翻訳メモリによって提供される情報が翻訳者とって有益な理由を、「マッチ率」に示されるような形式的な構文の差分情報に帰するのではく、むしろ差分には表れない箇所 (co-text) に焦点を当て分析する。テクストタイプや翻訳目的に依拠した翻訳を行う為の情報、つまりスタイルやモダリティの合致 (register) に必要な情報を翻訳メモリが提供しているのであり、この側面から翻訳メモリの有効性を考える。



    ドイツロマン主義者の翻訳論:F・ローゼンツヴァイクに焦点を当てて
    斉藤 美野
    立教大学大学院 異文化コミュニケーション研究科博士後期課程 (S)

    ABSTRACT
    19、20 世紀ドイツにおけるロマン主義作家・思想家が展開した翻訳論を、ユダヤ人思想家F・ローゼンツヴァイク(1886-1929)に焦点を当て検討する。ローゼンツヴァイクの翻訳観を、M・ブーバーとの共訳である聖書のドイツ語訳への取り組み方などから考える。古風で率直な翻訳法でありながら、ドイツ語を新しくする要素もあったという翻訳法を選んだ理由を、ローゼンツヴァイクの言語観や翻訳の捉え方から推測する。そのとき特に、ドイツ語を更新する狙いがあったという点と、何故新しさを求めたのかという点に注目する。先行して聖書のドイツ語訳を、逐語訳を避けて行った M・ルターの翻訳法との比較も行う。また、19世紀初めのF・シュライエルマッハーの翻訳論における、「翻訳の読者のほうを作家に向けて動かす」方法と「作家を翻訳の読者に向けて動かす」という2つの翻訳法についても触れ、それとの関連からもローゼンツヴァイクの考えを探りたい。そして、ローゼンツヴァイクが翻訳の可能性や役割をどのような点に見出していたのかを考える。



    "Japan Cool" の輸出法:日本のマンガの英語翻訳への新たな視点
    中村 優子
    立教大学大学院 異文化コミュニケーション研究科博士後期課程 (S)

    ABSTRACT
    "Japan Cool"――ポケモン、ドラゴンボールのブーム、「千と千尋の神隠し」のアカデミー賞受賞と、今、日本のマンガ・アニメカルチャーが、世界から熱い視線を浴びている。売り手市場の日本のマンガの輸出をどう行なうかは、日本の文化をどう紹介するかという重要な問題であり、つまりそれは、日本語をどう英語へと翻訳するか、また、日本のマンガに表れる日本文化の特徴、日本のマンガの持つ特性を、いかに外国人の読み手に伝えるかにかかかっているといえるだろう。例えば、日本のマンガは、週刊誌にまず載せられ、それがヒットすれば連載は継続し、最終的には本になり、翻訳本という形にもなるという宿命を持つ。こうした点でマンガは小説や詩よりも、より "今" を映すメディアとしての特性をもちやすい。またアメリカンコミックと比較するとコマ数が多いなど、独特の形式を持っている。
       本発表では、日本のマンガの特徴をいくつか説明した上で、「うる星やつら」「NARUTO」「NANA」の3作品を使って、日本のマンガに表われている日本社会の今日性、時代性、そして日本文化の個性といったものを表現する言葉や手法、特に、漢字とふりがなとその語の音が一度に表現できる日本語のマンガの特性を中心とした考察をし、英語圏の読者に「マンガによる日本文化との交流」という形で楽しんでもらえるような、ジャパニーズマンガの英訳の新たな可能性を探る。



    「翻訳教育」とテクスト分析
    長沼 美香子
    立教大学

    ABSTRACT
    大学における翻訳教育の可能性をさぐる上でのモデルは、さまざまな観点から提案されることが望ましい。その可能性のひとつとして、テクスト分析がどのように応用できるかを考察するのが、本発表の主たる目的である。インターネット上で公開されているシラバスを参照すれば、わが国の大学での翻訳教育の一面を概観できるが、その全体像が多様であることは論を待たない。「大学」と「翻訳」というふたつのキイワードの接点から見えてくる新たなトレンドを背景として、実態調査による現状の把握や課題の共有なども喫緊の問題であろう。多数の大学で翻訳関連の授業が開講されている現実にもかかわらず、翻訳教育についての可能性を議論する機会は極端に限られている。これは日本の大学における翻訳教育が、翻訳理論研究の応用分野としての位置づけを確立していないことのあらわれでもある。また同時に、外国語教育との関係も明確ではない。そこで本発表では、翻訳理論研究の成果に基づく英語と日本語のテクスト分析を応用して、英語教育とのつながりも考慮しながら、大学での翻訳教育のひとつの暫定モデルを提示してみたい。



    新聞記事の「動詞」の韓日翻訳ストラテジー:語種別頻度調査に基づく「読みやすさ」の観点から
    金 漢植
    韓国外国語大学 通訳翻訳大学院

    ABSTRACT
    1.  序論
    現代において、おそらく最も多く読まれているものの一つが新聞の記事だろう。情報化時代の到来により、最近では印刷された新聞だけでなく、ネット上の新聞もかなり読まれるようになってきた。新聞記事の第1の目的は、5W1Hに基づき、事件を正確に、迅速に報道することだが、それはある意味で必要最低限の目的を達成したことに過ぎない。より良い記事となるためには、記事が全体として読みやすく、自然な文となっていなければならない。記事の翻訳文についても同様のことが言えよう。文の読みやすさ、リーダビリティーを左右する主な要因として、英語においては、センテンスの長さ、単語の難しさ、そして文構造の複雑さなどの諸要因が指摘されている。日本語の文章については、これら要因の他に、漢語と和語、外来語の語種別使用頻度などがリーダビリティーに影響するとされている。本研究では、動詞に焦点を当て、語種別出現比率について日韓両国の新聞記事を分野別・新聞社別に比較分析し、さらには、動詞を中心として記事の韓日翻訳のストラテジーについて考察する。
    2.  研究の方法
    日韓両国の3大新聞(朝日・読売・毎日、および朝鮮・中央・東亜)の記事の中から、政治、経済、社会の3分野につき、記事に使用された動詞の語種別出現比率を調べる。日本語の記事には、漢語と和語動詞以外に、"アクセスする" のように、外来語の動詞表現も出現するが、これは少なくとも政治、経済、社会面ではごく稀なケースに過ぎない。また、韓国語の記事にはそのような表現は確かめられなかったため、漢語と固有語(和語)の2つに分けて、新聞社別、分野別の出現比率を比較する。さらに、韓国の3大新聞社の日本語サイトに掲載されている韓日翻訳の実際を対象に、読みやすい自然な日本語になっているか分析する。



    Managing incompatible ideologies in translation/interpreting
    Ovidi Carbonell i Cortés
    University of Salamanca, Spain

    ABSTRACT
    This presentation addresses translation from a critical, socio-cognitive perspective as a site where contending ideologies may co-occur, leading either to conflict or to negotiation. The role of the translator is crucial in those cases where the speaker/writer's belief system is incompatible or highly problematic to the recipient's ideology, yet translation theory has hardly dealt with precise intercultural strategies to make communication and mutual understanding possible across ideological group boundaries.
       Drawing from recent media examples of ideologically-determined misunderstanding and conflict between Muslims and non-Muslims in Europe, but also between so-called "Oriental" and "Western" cultures, I shall explain several cases where translation has been -- or could have been -- used as a necessary means to cope with intercultural conflict. In this way, I shall review several means to assess and manage, at a discursive and pragmatic level, ideological inferences of otherness as they are transmitted and remodelled in the translation process. My approach aims at showing how the Other is constructed and legitimated by exposing its basic cognitive structure and how this structure is modified and destabilised, even challenged, by different receiving communities.
       The Spanish cases studied show a fundamentalre-interpretation by individuals and communities when ambivalent and potentially negative presentations are translated? local coherence being redirected to produce a negative evaluation of the original writer and his/her cultural milieu. The analysis of these reinterpretation processes through basic categories of selfhood and otherness -- as well as quite a few in-between categories -- may provide a general critical framework to prevent undesired social representations and foster intercultural sensitivity, which, in any case, seems to require a degree of negotiation and reassessment of one’s own cultural identities.



    単一事例デザインによる自己記録を用いた文字通訳訓練の効果の検討
    〜学習者の言語化に焦点をあてて〜

    吉岡 昌子
    立命館大学文学部

    ABSTRACT
    文字通訳とは、聴覚障害のある個人に対して、話し手の話す内容をその場で文字によって伝える活動のことをいう。初期の文字通訳の訓練では「速く正確に情報を伝える」ことが学習の目標となる。そのための方法として、学習者が通訳の結果を観察し、正誤を記録するという自己記録がある。その方法の効果について、吉岡(2007)はルール支配行動の視点から学習者の言語化が影響することを示唆している。ルール支配行動とは、学習心理学の「言語による行動制御」に関する理論である。この示唆をもとに、本研究では「自己記録の際の言語化」と「文字通訳のパフォーマンスの変化」の関係について検討した。
       まず、言語化について指標の定義をするため、自己記録を用いた訓練の終了者8名に次の課題を行った。それは「より良い通訳をするには?」という意味の質問に回答を筆記させるものであった。回答のタイプを調べたところ、次のタイプが最も多かった。それは「訳出の成功につながる『通訳時の反応』と『その直前の状況』」の記述であった。このような「〜のとき、〜をすると、〜になる」という記述は、ルール支配行動の典型的なルールの形態である。加えて、正確なルールは学習を促進することが知られている。そこで、上述のタイプを「適切な反応」、それ以外の反応は「その他」と定義した。
       次に、初心者8名に実験を行い、自己記録の導入前後における「言語化と通訳のパフォーマンス」の変化を調べた。1人1人の細かな変化を調べるため、研究法には単一事例デザインが用いられた。実験の結果、自己記録の導入後、言語化の量の増加とパフォーマンスの上昇には対応関係が認められた。また、「適切な反応」が増加した個人のほうが、そうでない個人より通訳のパフォーマンスの上昇が大きかった。考察では、文字通訳の指導法を洗練するために、データから得られた示唆と今後の課題が議論された。



    [通訳教育分科会セッション]
    通訳教育に関するアンケート調査(平成18年度実施)の中間報告
    分科会代表:田中深雪(大東文化大学)
    幹事:稲生衣代(青山学院大学)、河原清志(立教大学)、新崎隆子(青山学院大学)、中村幸子(愛知淑徳大学)

    ABSTRACT
    通訳教育分科会では、本年4月から「各大学、大学院、専門学校と通訳スクール等に於ける通訳クラスの受講生のプロフィール、およびニーズ調査」のアンケートを実施したところ、全国の会員有志から数々のデータが寄せられた。本セッションでは、そのアンケート結果の中間報告と、データ分析会等を実施する。セッションで取り上げる主な内容は以下の通りである。
     1)  実施アンケートについて
     2)  アンケート調査の結果報告・データ分析
     3)  「日本の通訳教育の現状・通訳教育のあり方」について
     4)  今後のリサーチの可能性についての検討
    なお、本セッションは大学・大学院あるいは専門学校等で通訳および通訳関連の授業を担当している指導者の方々を対象とします。学生の方の参加は原則として認めていませんのでご了承ください。



    [ワークショップ]
    ワークショップ2:中国語通訳翻訳研究入門

    ABSTRACT
    このワークショップでは中国語・日本語の翻訳と通訳に焦点をあてて実践報告とディスカッションを行う。特に通訳・翻訳の教育と実践をいかに結びつけるかを討論の主たるテーマとしたい。
       1.  通訳・翻訳教育では何を、どのように教えるべきか
    研究発表において、中国と台湾の通訳教育について紹介されたことをふまえ、コーディネーターより日本の状況について簡単に紹介する。主にプロ通訳者養成を目的とする民間教育機関、大学学部、大学院での教育が中心の話題となる。さらに日・中・台で出版されている中日通訳のテキスト比較を行いたい。また職業人養成において理論研究がどのような役割を果たすかについても検討したい。
       2.  翻訳・通訳の現場から見た教育訓練の問題点
    実際に翻訳・通訳者として稼働するようになると、教室では経験することのなかった様々な困難に直面する。現場と教室をいかに近づけていくかが、プロ通訳者養成における課題であると考え、その方策を探る。



    [特別プログラム]
    「グローバル化する日本における法務通訳翻訳の現状と課題」(後援:法務省)

       「法務通訳翻訳」とは、本プログラム用に特別に使用する概念である。その意味は、法務省が司る、犯罪捜査等における検察庁の業務、刑事施設の運営と矯正処遇等、保護観察などの更生保護、入国管理及び難民認定に関わる業務、人権啓発などの人権擁護活動、さらには法整備支援活動等に伴って幅広く必要とされている通訳翻訳である。警察通訳翻訳、弁護通訳翻訳、法廷通訳翻訳などとともに、司法通訳翻訳業務の重要なる領域のひとつである。
       我が国における外国人による刑事事件は全体の1割を超えており、裁判手続のみならず、その前後に行われる捜査手続、矯正、更生保護、さらには入国管理などの業務における通訳翻訳が必要かつ重要であることは言うまでもない。適切な法務通訳翻訳の前提として、刑事司法を中心とする法務行政の仕組みや運用等に関する理解が、通訳翻訳人に不可欠である。また、通訳翻訳人の「ユーザー」である法務省・検察庁としても、資質の保証された有能な人材の確保は継続的な課題となっている。
       来日し、滞在ないしは在住する外国人が増加している今日、法務省・検察庁の様々な業務の中で必要不可欠となった通訳翻訳に、一層広く社会的な認識が得られなければならない。それぞれの機関・部門での諸手続の中で、どのような通訳翻訳がなされているのか、いかなる通訳翻訳人にその言語の多様性において、能力と資質を期待されているのか。通訳翻訳人はいかに養成されているのか。こういった問題提起に応えることは、日本通訳学会会員(研究者、教育者、大学院生、実務家を含む)のみならず、全国各地の検察庁・入国管理局・刑務所・保護観察所・人権擁護部などに「通訳人」として「登録」され、あるいは、法整備支援に携わっている「通訳人」、さらにグローバル化する日本の将来に関心をもつ一般市民にとっても、きわめて有意義なことである。
       本企画はそういった現状の把握とともに、緊要な課題を浮かび上がらせ、今後とも望まれるあり方を探究することを目指すものである。


    close

    (c) 2007 Japan Association for Interpretation Studies (JAIS)